アウトサイダーたち
2008.8.31 Sunday
 TV桟敷で楽しんだ北京五輪も終わり、入れ替わるようにヨーロッパ各国で08−09シーズンがスタートした。9月になれば、いよいよ2010年ワールドカップに向けた最終予選もスタートする。昨今喧しいJリーグの秋春開催については、断固反対の立場を採る私だが、新たなシーズンが始まる9月というのは、これはこれで気持ちが切り替わるいい機会だと思う。

 先日、チャンピオンズリーグの組み合わせが発表された。今回は例年になく非常に興味深い顔ぶれが並んでいるので、私も密かに注目していたのだが、もちろんマンUやチェルシーやバルサといったメジャーどころは、はっきりいってどうでもよろしい。今さら言うまでもなく、私の視線は東欧勢をはじめとするマイナーどころにある。残念ながら今大会では、旧ユーゴ勢は全滅となってしまったが(セルビアのパルチザンも、クロアチアのディナモも、あと一歩で涙を飲んだ)、その代りにこれまで見たことも聞いたこともないクラブが、欧州の晴れ舞台に参戦することとなった。

 まず、BATEボリソフとアノルトシス。欧州フットボールに詳しい御仁でも、おそらく初耳の名前だろう。実際、私も今回のドローで初めてその存在を知った。BATEはベラルーシのクラブで、アノルトシスはキプロスのクラブ。いずれも祖国ではそれなりに強豪らしいが、チャンピオンズリーグ予備戦1回戦から勝ち上がっている、まさに無印チーム。ちなみにベラルーシもキプロスも、チャンピオンズリーグ本戦に自国のクラブを送りだすのは、今回が初めてである。

 私自身はベラルーシには行ったことがないが、キプロスの国内リーグは一度だけ現地で観戦したことがある。イメージとしては、ギリシャの地方クラブのようなノリだろうか。スタジアムは小ぢんまりとしているものの、サポーターはかなり熱く、立ち見のスタンドで花火や発煙筒を焚くのはデフォルトとなっている。硝煙くすぶるゴール裏は、かなりヤバい雰囲気だ。

 キプロスといえば、島の北部がトルコに占領されている状態が今も続いている。アノルトシスの本拠地も、もともとは北部のファマグスタであったが、今は国際空港があるラルナカを本拠地としているという。今大会ではグループBに組み込まれ、インテル、ブレーメン、パナシナイコスと同組。一方のBATEはグループHで、レアル・マドリー、ユベントス、ゼニト・サンクトペテルブルクと対戦する。いずれも1勝どころか、勝ち点1を勝ち取るのさえ難しいミッションだが、ささやかなサプライズを期待せずにはいられない。

 実はもうひとつ、今大会で密かに注目しているクラブがある。それが、昨シーズンのルーマニア王者、CFRである。クラブの正式名称は「Fotbal Club CFR 1907 Cluj」で「CFR」というのは「ルーマニア国営鉄道」の略、つまり「ロコモティフ」というわけだ(ちなみにエンブレムには機関車が描かれている)。だが私は、それ以上に「Cluj=クルージュ」というホームタウンの名前に反応してしまう(わが国では「クルージュ・ナポカ」が一般的)。委細は省くが、この街はハンガリー領だった時代のほうが長く、クラブが設立された20世紀初頭はオーストリア・ハンガリー帝国の版図に位置し、帝都ウィーンに次ぐ第2の都市であった。現在は、ルーマニア最大の最高学府たるバベシュ・ボーヤイ大学をはじめ、国立・私立問わず多くの大学を有する学園都市となっている。

 ルーマニア・サッカーといえば、かつては欧州チャンピオンとなったステアウア・ブカレストをはじめ、ラピッド・ブカレスト、ディナモ・ブカレストなど、これまでは首都ブカレスト勢の独壇場であった。それが今回、非ブカレスト勢であるCFRが、しかも予備戦免除の「ルーマニア王者」として欧州の舞台に登場するのは、極めて歴史的意義が大きいといえよう。チームの陣容を見ても、ブラジル、アルゼンチン、コートジボワール、ポルトガルと、その顔ぶれは実に多岐にわたる。いったいどんなサッカーを見せてくれるのだろう。チャンピオンズリーグで同組となった、チェルシー、ローマ、ボルドーの牙城を崩すのは難しいだろうが、私にとって最も楽しみなのは、実はこのCFRだったりする。

 ――なんてことを書いていると、またぞろ欧州への思いが募る。今年の地域決勝は石垣島なので、何かと出費を抑えなければならない今日この頃だが、そろそろ国内やアジアから飛び出してもいい時期だ。BATEにしろ、アノルトシスにしろ、CFRにしろ、年が明けても欧州の舞台で生き残っているとは思えないが、いずれ近いうちに国内リーグでお邪魔したいと思う。それまでの間は、アウトサイダーとしての意地を発揮して、大いに欧州の大舞台を盛り上げてほしいものだ。
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