お金と情熱、そして勇気
2009.1.30 Saturday
 気が付けば2010年が明けて、最初の月が終わろうとしている。今さら「明けまして云々」も間抜けな感じがするが、本年も当サイトをよろしくお願いいたします。人によっては「もう2月?」と、いつものように日々の移ろいの速さに嘆息をついているかもしれないが、私自身は「まだ1月なんだ」という心境である。お陰さまで、今年は随分と濃密な1月を過ごすことができたからだ。というのも、松が明けぬうちにイエメンでのアジアカップ予選を取材し、その後は南アフリカに飛んで10日間も各地を飛び回っていたからである。せっかくの正月、本当はもっとのんびりしたいという気持ちも、ないわけではなかった。とはいえ、若き日本代表が元日から始動していたのだから、取材する側も弛緩しているわけにはいくまい。何といっても今年はワールドカップイヤーなのだから。

 それにしても、この時期にワールドカップ開催地を巡ることができたのは、非常にいい経験であった。南アは過去2回訪れているのだが、昨年6月のコンフェデレーションズカップにしても、11月の日本代表の遠征にしても、いずれも試合を取材するのが主目的であり、なかなか南アという国そのものを注視する時間を確保することができなかった。それが今回は、残念ながらフットボールの試合は見られなかったものの(南アでは1月はオフシーズンであるため)、そのぶん各ヴェニューのスタジアムをはじめ周辺取材に注力することができた。これまで南アというと、どうしても治安の問題ばかりが論じられてきたように思うが、それを補ってあまりあるこの国の魅力というものを堪能することができたし、その一方で治安以外にも留意すべき課題があることも痛感した。この取材の成果は、3月25日に発売予定の「2010南アフリカワールドカップ体感マガジン」(日経出版)でご覧いただけるので、楽しみにお待ちいただければと思う。

 今回の取材を通じて、あらためて決意したことがある。それは、私自身が現地で体験した南アという国の素晴らしさを、可能な限り発表していこう、ということである。もちろん、かの国のすべてを礼賛するつもりはないし、治安に関しては依然として不安な面もあるのも事実だ。しかし一方で、これまでの日本における南ア報道が、あまりにもネガティブなものであったのも紛れもない事実であり、実際に現地で見聞してきたことと乖離していると実感することもしばしばであった(今回お世話になった現地在住の日本人からも「日本の報道は偏っているので、いつも悔しい思いをしている」と語っていた)。いささか物騒な事件が増えたとはいえ、幸いにもわが国は世界的に見て、まだまだ治安はよいほうである。そんな日本に比べれば、南アの治安は20倍も30倍も悪いのかもしれない。だが、それを100倍も1000倍も悪いように伝えてしまうのも、どうかと思う。

 確かに今回の南ア大会は、これまで日本代表を応援するために様々な国に乗り込んでいった猛者たちにとっても、これまでになく高いハードルであると言えよう。治安以外にも、インフラの問題(現地では基本的に車での移動となる)、宿泊の問題(デンマーク戦が行われるラステンバーグは、絶望的なまでに宿の絶対数が少ない)などなど、クリアすべき課題は少なくない。金額的にも、これまで以上に出費を強いられるのは間違いないだろう。だが、これらのマイナス要素を補って余りあるだけの魅力が、南アという国には詰まっている。それは、底抜けに明るくフレンドリーな人々であったり、これまで見たこともないようなドラマティックな景観であったり、自然公園を悠然と闊歩する野性動物であったり、リーズナブルな価格で味わえる料理やワインであったり、とにかく枚挙に暇がない。そして何より、アフリカ最南端での冒険は、おそらく人生で一度しか味わえないイベントであり、この経験はきっと貴方のフットボールライフに豊かな彩りを加えるはずだ。

 南アというハードルをクリアするために必要なのは、いくばくかのお金と情熱、そして勇気である。確かに、ある程度のリスクを伴うことは間違いない。だが、リスクをかけなければゴールを奪えないという事実は、サッカーファンなら誰もが知るところであろう。決断の時は、刻一刻と迫っている。
 
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