| ミズノスポーツライター賞授賞式について 2010.04.28 Wednesday |
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4月21日、東京・品川のグランドプリンスホテル新高輪にて、ミズノスポーツメントール賞、およびミズノスポーツライター賞の受賞式があった。このところ4月とは思えぬ寒い日が続いていたが、幸いこの日は晴天に恵まれて文字通りの好日。久々にスーツにネクタイといういでたちで会場に向かった。道中、何とはなしに案内状を読み直していると、受賞者の集合時間に関する記載があることに初めて気付き、にわかに慌てた。開始時間には間に合うものの、集合時間には20分の遅刻である。それまでのんびり構えていたのだが、一転して落ち着きがなくなってしまった。そのうち、運営スタッフの方から「どうしました?」との電話が携帯に入ると、さらに心拍数は上昇。品川駅を降りたらダッシュでタクシーに飛び乗り、無我夢中で受け付けに到着した。受け付けを済ませると、さっそくバラの花を象った名札が渡される。そこには麗々しい書体で「ミズノスポーツライター賞 最優秀賞 宇都宮徹壱」と書かれてあった。以後、この会場から離れるまでの間、私はずっとこの名札を胸に付けていなければならない。いや、ある程度予想していたことではあったが、普段から目立つことが大嫌いな性格ゆえ、これほど身の置き所に困ったことはなかった。 ふと見渡すと、日本サッカー協会の田嶋幸三専務理事や森喜朗元総理もいるではないか。本能的に私は廊下の隅に身を寄せ、うつむきながらそそくさと控室に向かった。かなり昔(まだ書き手として生計を立てられなかったころ)、結婚式の披露宴撮影のアルバイトをしていたことがあるが、まさにあの時の感覚が蘇ってくる。撮影者は可能な限り目立たぬように行動するのが鉄則。だが今回は、新郎新婦ではなく、他ならぬこの私が主役である。何という居心地の悪さだろうか。授賞式が始まるまでは大げさでなく、生きた心地がしなかった。 やがて定刻となり、受賞者の席に着席。主催者のあいさつ、受賞者の発表と受賞理由、そして表彰状とトロフィー、賞金の授与があった。拙著「フットボールの犬」については、スポーツライター賞の選考委員長を務める岡崎満義さんの講評が心に残った。メモをとることはかなわなかったので、印象に残った言葉を思いつくままに書き記す。 「昨年発表された1600もの作品の中から受賞作を決定した/最優秀賞と優秀賞(柳沢健氏著『日本レスリングの物語』)との差はごくわずかなものであり、どちらが最優秀賞となってもおかしくなかった/宇都宮氏の『フットボールの犬』の中で特に印象的だったのはフェロー諸島の話(Vol.07「羊の島に生まれて」)だった/NHKの「世界ふれあい街歩き」のように、一緒に旅をしているような感覚。あえて言えば「新感覚サッカールポルタージュ」/また本書に掲載された写真は、ストーリー(文章)を補強し、効果的なメリハリを与えていた/今後は『忘れられた日本人』の著者・宮本常一のように、世界中にいるサッカー好きの古老、彼らのライフスタイルが浮かび上がるような取材を期待したい」 そんなこんなで粛々と式は進行していき、最後は各賞の最優秀賞受賞者のスピーチとなった。当初は「1分ほどの時間で」と聞いていたので、極めて簡潔な内容のものを準備していたのだが、私の前に登壇した石森昌治さん(埼玉スウィンスイミングスクールコーチ)のスピーチが3分を超えるものだったので、急きょ頭の中で内容を膨らませることとなった。この決断は失敗4割、成功6割だったように思う。壇上に立って、あらためて140人もの来賓の方々を見渡したとき、一瞬だけ頭の中が真っ白になった。最初の挨拶の部分では、かなりとちったような気がするが、その後は少し落ち着きを取り戻し、何とか一気にフィニッシュまで持っていくことができた。自分では60点くらいの評価だが、その後のレセプションでは「なかなか良かったです」「感動しました」といった言葉を数多くいただいた。お世辞半分としても、素直に嬉しかった。 さて、このスピーチの内容については「どんな内容だったのか知りたい」というリクエストをいくつかいただいている。そこで、当初用意した原稿をもとに、記憶に残っている範囲で加筆したものを再現して、この稿を終えることにしたい。 「ご来場の皆さん、こんにちは。写真家・ノンフィクションライターの宇都宮徹壱と申します。いつもは辺境地や危なっかしい土地ばかりを取材していますが、今日のように緊張を強いられたのは、たぶん去年初めて訪れたヨハネスブルク以来のことだと思います(笑)。さて、このたびは、このような過分な賞をいただき、大変恐縮しております。ミズノスポーツ振興事業団の皆さん、選考委員の皆さん、今日この場に来ていただいた仕事仲間の皆さん、そしていつも支えてくださっているファンの皆さんと家族に、あらためて感謝します。有難うございました。 この『フットボールの犬』という作品は、過去10年間にわたるヨーロッパ取材の集大成であり、そうしたこれまでの仕事が認められたという意味では、純粋に嬉しく思っています。その方で『ネットライターという存在が、ある程度は認められたのではないか』とも考えています。私自身、ブックライターとしての矜持はありますが、書き手としてのスタートはインターネットであり、主戦場は今もスポーツナビをはじめとするインターネットであると考えています。ゆえにネットライター出身であることに誇りを持っています。 私がこの業界で仕事を始めた当初、インターネットというメディアは新聞や専門誌と比べて、2段も3段も低く見られている存在でしかありませんでした。それがこうした賞をいただいたことにより、このインターネットというメディア、そしてそこで作品を発表する『ネットライター』という存在が、ようやく評価の対象となったことに深い感慨を覚えます。実のところネットや携帯サイトでは、紙媒体でなかなか発表の場を与えられない多くの若い才能が、今ももがき続けているのが現状です。彼らは『今はネットライターだけど、いつかは本を出したい』と頑張っているわけです。そうした後輩たちが、自分の後ろに控えているという現状について、もっと知っていただきたい。いささか口はばったい言い方ではありますが、今回の私の受賞が、その契機となることを願ってやみません。 私自身、13年前にフリーの活動を始めてから今日まで、本当に無我夢中で走り続けてきました。もちろん楽しいこともありましたが、それ以上に自分の背中を押し続けたのは『いつまでこの仕事ができるのだろう?』という漠とした不安だったように思います。5年、10年、ずっとそうした不安に駆られながら仕事をしてきました。業界自体が決して安泰とは言い難い昨今ではありますが、それでも今回このような賞をいただいたことで『もうしばらくは続けられそうかな』と、ようやく一息つくことができた感じです。今後については、間もなく南アフリカで開幕するワールドカップに向けて、粛々と準備しているところです。もちろん開幕後は、現地から日々、ホットな情報を発信し続けるつもりです。このたびは本当に有難うございました」 |
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